働くことの本質について思ったこと

誰もが毎日働き、経済活動に勤しむことが生きるということの大部分を占めていますが、そもそも経済活動とは何なのか、何のために働くのか、どのような心持ちでいるべきなのかについて、『日本人のための経済原論』(小室直樹(2015)東洋経済新報社)という経済論の書籍からわかったことをまとめます。小室直樹さんは社会科学者として数々のベストセラーを書かれています。この書籍を読み、私の感想として、働くことの本質をシンプルに要約すると下記の2つになりました。

・目的をきちんと設定し、そのために合理的に働くこと、それに救済を見出すことができ、信念を持てるか。

・目的に対して、時は金なりであり、正直であるか。

資本主義の精神と「時は金なり」という思想、「正直」という美徳の意味

資本主義の精神から経済は動いている

「資本主義の精神(der geist des kapitalismus)とは、企業経営と労働力使用の目的合理化である。そして、経営と労働とが救済(salvation)の方法となることである。宗教的行動となることである。資本主義の精神には、幾つかの系(corollary 必然の結果)があるが、中でも特に重要であるのが、時は金なり(time is money)という思想。正直(honesty)という美徳である。」(小室直樹(2015)『日本人のための経済原論』東洋経済新報社)

難しく、抽象的な表現ですが、ここの部分に資本主義の精神性から生まれる経済活動の本質が書かれていると思い、原文のまま引用しています。

まず、人にはやりたいこと・やるべきことがあり、それを達成するためには社会に価値を提供し続けなければなりません。そこで、人の様々な価値観を基に企業が作られ、ヒト・モノ・カネといった経済的資源を集め、それを組織化し、それぞれの企業の強みを活かして社会に必要なモノ・サービスを提供していく営みが行われます。その営みは成果(お金や利益)として人の努力がなるべく報われるようにデザインされています。そして資本主義経済では自由競争を原則とする市場の中で、企業を様々な価値観の基に運営し、継続・発展させることで社会に必要なモノとサービスが生み出され、社会がアップデートされていきます。社会に価値を提供することで生き続ける(人らしく)ことができるという目的に対して、人が集まって企業となり、合理的に計画を立て、行動し、結果をチェックし、また目的に向けて行動をアップデートしていきます。人のもっと良くなりたい、幸せになりたいという欲求を原動力に自分と企業、社会をアップデートさせていくことが企業経営と労働力使用の目的合理化の意味です。

そして、経営と労働を行うことで自分や社会が物心両面で豊かになること、必死に働くことが自分や他者への救いの手段となるということです。人生には不安がつきまとい、悩みが無い人は少ないです。どうすれば救われるのかの思考・行動様式が宗教であり、何をしてよいかがわからず一日中緊張感に苛まれるのであれば、働くことを救済及び宗教的行動とし、皆が救われる生き方にするということです。

普段、当たり前のように社会にあるものと働き方や暮らしは資本主義の精神性から生まれ、動き続けています。それは様々な形はありますが資本主義経済に参加している人の誰もが持っている精神だと思います。

「時は金なり」という思想

人生の有限性から、立ち止まり時間を浪費してはならないことの他に、機会損失を避けることの意味がありますが、ここではいかに目的合理的に働くのか、目的のためにいかに無意味な時間を過ごさないのかも意図されていると思います。どこへ向かうべきか、どうあるべきかの目的があり、それを達成するための時間は有限であること、期日があるということです。時間の有限性を理解しなければ成果(お金)が稼げません。達成すべき目的を設定し、それに対してやりきることに対してモチベーションが生まれます。その目的に対して徹底的に考え抜き、成果が出るまでやめないことに時間を費やすことが努力であり、その過程こそがお金に換算しうる価値となります。変化を加速させていく資本主義経済では今必要なことをその都度きちんとやっていくことが大切であり、立ち止まったままで動き出さないと機会損失になります。今ある選択肢の中から見極めて、成功する可能性が高くて自分にできることをやり続けていくことが価値に繋がります。

「正直」という美徳

嘘や偽り無く、自分に不利な情報も含めて事実に基づいて物事をありのまま伝えることです。目的合理的に働くためにはきちんとお金を頂戴し、お支払いすることで、企業にお金を循環させることが必要です。お金とは信用そのものであり、モノとサービスの購入者が誰であってもお金そのものが信用となっているため購入することができます。お金の価値は金によって担保されているわけでは無く、信用だけで成り立っており、それは数字として表されています。つまり、人から信用されなければそれがお金となって巡ってくることは無く、嘘をつけば信用とお金が離れていくことになります。また、人から協力を得られることもありません。期待されている価値をきちんと提供すること、そこに嘘や偽りが無いこと、信用できること、責任を最後まで取ることで初めて社会に価値を提供することができます。それがお金と交換されることで価値が巡り、お互いが救済されます。そのためにきちんと毎日信用を築いて行けるように働いていくことが重要です。信用はお金に先立つ無形資産です。それが人同士を結び付け、お金を生み出す源泉になります。

まとめ

この書籍に書かれている資本主義の精神と時は金なりという思想、正直という美徳の意味をまとめてみました。現代は変化が激しく、先行きが不透明な社会ですが、自分の価値観を見極めて目的を立てること、お金よりも信用を稼ぐこと、リスクを取って行動し続けることは今も通用する普遍的な考え方ではないでしょうか。

働くことの本質

  • 目的をきちんと設定し、そのために合理的に働くこと、それに救済を見出すことができ、信念を持てるか。
  • 目的に対して、時は金なりであり、正直であるか。